文字にするとちょっとカッコいいブログタイトルですが・・・まさかの詩集を刊行しました。今日はすこしその話を紹介します。
できあがった詩集を手に取り読んで思ったこと、それは「やはりここに行きついたか~」です。とにかく私が20年以上向き合ってきた「おなか」というものをなんとかして形にしたいと絵をかいたり物語を書いたり、いろいろと無駄な?努力を重ねてきて行きついたのが、まさかの「詩」でした。
ここで1つ質問しましょう。皆さんは「おなか」を知っていますか。もちろん知っていますね。では「おなか」をどう説明しますか。例えば外国の人に“オナカッテナンデスカ?”と訊かれたら(日本語で結構ですので)どう説明するでしょう?これは意外に難しいのではないでしょうか。
日本人は「おなか」というものを概念、つまりイメージとして認識しているように思います。「おなか」の明確な定義はありません。腹部のことでしょ。じゃあ腹部ってどこからどこまで?それとも内臓のこと?内臓って腸のこと?胃のこと?子宮のこと?「ハラがたつ」とはどこがどういう状態?腑に落ちるの腑ってなに?
こういう風に考えて行くと「おなか」って意外にあやふやな言葉だと思いませんか。
アメリカでは「おなか」を意味する英単語がないのです。腹痛をアメリカ人は“a stomach ache”つまり胃痛と言う。腸が痛くても胆のうが痛くても“a stomach ache”だそうです。は「おなか=ほぼ胃」で済ませてしまっている、つまりそこまで関心がないということでしょう。
一方で中国などでは「丹田(たんでん)」という概念を持っているそうです。丹田を臍下丹田(せいかたんでん、へそしたたんでん」)と呼ぶこともありますが、おへその少し下にあるおなかの中心とされています。インドではチャクラの一つともされているようですが、このように私たちの身体の中心に丹田があるという考えで、独自の「おなか観」を持つ日本人にも違和感が少ない概念です。
ただこれは私の個人考えですが「丹田=おなか」とも言い切れません。わかりやすく言うと、丹田は点です。明確に「ここ」と指差せるものです。それに対し「おなか」は丹田よりも大きな物体です。丹田が指差せるものに対し、おなかは両手で包み込むくらいの存在量があります。つまりどちらも身体(あるいは命)の中心なのですが、その大きさと範囲が、、、ちょっとマニアックすぎるのでこの辺にしましょう。笑
つまりここで皆さんに知っておいてほしいのは、「おなか」は命の中心であるということです。そしてその命の中心を、世界中のどの民族よりも深く追及しているのはおそらく私たち日本人であろということです。でなければどうして日本人は「ハラキリ」をしてきたのか説明がつきません。日本人はおなかこそ命の中心とみていた。だから「おなか」を切って命を絶つという自害法を採用してきたのです。
いろいろ書きましたが私たちの日本文化、日本人の身体観、生命観のなかにおける「おなか」の意味について、そして私がなぜ「おなか」「おなか」と言うのかその理由について、少しでも伝わるでしょうか。
やはりおなかを説明するのはとても難しいです。「おなか」という言葉は聞きなれていますが、その奥には無限の宇宙くらいの広がりがあり、しかも掴みどころがなくて大変なものです。
話を詩集に戻しましょう。
私は大学時代に異様ともいえる感銘を受けた漫画があります。有名な手塚治虫さんの『火の鳥』です。20歳ごろに人生で初めて『火の鳥』シリーズを読み進めたのですが、一冊読むたびに「ずーん」という謎の余韻におそわれていたのですが、今その理由がようやく解けたように思います。
『火の鳥』は「命とは何か。命はどこからやってきてどこへ行くのか」という一大テーマを語った傑作ですが、それは今わたしが日々揉んで感じている「おなか」そのものだったということです。つまり私が人生ではじめて「おなか」に触れ感じたのは、このハラ揉みを始めるよりも10年ほど前、『火の鳥』からだったのだと思うのです。その余韻がずっとずっと今まで私の「おなか」の中で響き続けていたのかもしれません。
書き上げた『おなかの詩』を読んでみて感じたのは「そうか自分は道筋は違えども手塚治虫さんと同じものを追い求めているんだ」という再発見でした。命のはじまり、命の終わり、命のつながり、命そのもの、それを手塚治虫さんは漫画で、私は詩で皆さんに伝えようとしているのだと思います。
『おなかの詩』をどのように感じられるかはお任せします。できれば頭も心もなるべく働かせないで、そのままを感じ、また人生の折々で読み返し楽しんでもらえればと思います。わからなくていいのです。頭でわからなくてもおなかの中にきっと何かが残ります。私が『火の鳥』からもらったものと同じような何かが。
三宅弘晃
『おなかの詩』お申し込みはこちらよりお待ちしています。
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